フウシカフィールドレポート - 2021年 夏
「本当にこの中に野菜があるの?」
フウシカオーガニックの畑を見て子供たちが口にした言葉です。
“畑”と言われて子供たちが想像したのは、畝と野菜が綺麗に見える場所。でも、フウシカオーガニックの畑はどこからが畑の中でどこからが畑の外なのか分からないほど賑やかに雑草が生えています。
腰の高さほどもある草を掻き分けながら森さんが子供たちに話しかけます。
「ブロッコリーがどんな風に生えているか知ってる?」
「知らなーい」
濃い緑の葉の中に実るブロッコリーをひとりずつ収穫すると、子供たちの瞳が輝きました。
「採れたー!」「おいしそう」
ナス、ピーマン、ケール、インゲン、トウモロコシ、オクラ、バターナッツ。見たこともない不思議な形のUFOズッキーニ。自分の頭ほどもある、ずっしり重いスイカ。野菜を入れる籠がさまざまな形と鮮やかな色で埋め尽くされていきます。
足元にはカエル、チョウチョ、バッタ。生き物を発見するたびに声をあげて喜ぶ子供たち。
私たちが「雑草」「害虫」と呼ぶものが共存しているフウシカの畑は、彼らにとって最高のフィールドです。
整った環境で肥料や農薬を与えられ育つ野菜。
自然そのままの環境で生命力を引き出された野菜。
どちらにも良い点はあるけれど、畑で収穫し、洗わずにその場で食べられるのは何よりも素晴らしい体験だと思います。視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚。五感をフル回転させてフィールドを歩く時間が、子供たちの感性に知らず知らずのうちに影響を与えてくれたことでしょう。
自分たちの手で野菜を収穫する喜びは、食べる喜びにもつながります。
家に帰って早速子供たちとフウシカの野菜をいただきました。
オリーブオイル、塩、チーズをかけて焼いたズッキーニのグリルはとってもジューシーで大好評。
バターナッツの冷製スープは、かぼちゃの苦手な息子も完食。
「タネ、ヒト、ミライ」。
子供たちと畑を歩き、野菜を収穫し、その命をいただいて、これまで以上にこの言葉が大きく心に響きました。種と未来をつなぐのは、私たち人間。どんなものを育て、どんなものを選ぶか?で、未来は変わっていく。森夫妻の育てる野菜は、私たちの行動ひとつひとつが新たな可能性を生むことをいつもさりげなく気づかせてくれるのです。
著者
平野 美穂
20代後半からサーフィンをはじめたことがきっかけで地球環境問題に興味を抱く。産休中に通っていた工藝店で民藝の器に出会い日本の手仕事について学びはじめる。三児の母となった現在は「美しい暮らしの良品yaora」を営む傍ら、セレクトショップで器のバイイングやライティングに携っている。