FUUSHIKAのある暮らし-冬至

 黄金に色付いたカラマツの葉が空を舞い、道の脇にこんもり積もったら、八ヶ岳山麓は早々と冬支度に入る。今夏から始めたフウシカオーガニックの宅配野菜は、気付けば季節を3つ巡った。2週間に一度届く楽しみも、大地が凍てつく冬の到来と共にお休みに入る。昨日、森さんから今期の最終便を受け取った。

「畑で根を張っている間は、寒さから身を守ろうと自らの力で糖度を増すんだよ。そうして凍らずに頑張った野菜たちはすごく甘くておいしい」と、森さん。白菜、大根、人参、蕪、小松菜にほうれん草…。青く澄んだ空に、エネルギーに満ちた野菜たちの甘く瑞々しい香りが広がる。

季節と共に鮮やかに移り行く、豊かな自然からの贈り物。届いた段ボールの封を開けると、個性輝く命が不揃いに並んでいて、エネルギーのようなものが溢れ出てくる。その野菜たちを眺めているだけで、なんだか元気が湧いてくる不思議な感覚。毎回届くのが楽しみで、娘と一緒にわくわくしながら開けていた。

土と共に生き、作り手に愛された滋養あるフウシカの野菜たち。彼らと共に過ごす私の台所仕事は、純粋にうれしくてたのしい。それぞれの美味しさを大事に味わいたくて、どう調理しようかと野菜たちと対話している時、一人台所に立つ私に孤独感はない。

秋のある日に森さんの作業場を訪ねた際、収穫したさつまいもを一つずつ手で磨き、周りの土を落とす作業を拝見した。水で洗うと傷みやすく保存が効きにくくなるのだそう。スーパーで見かける土の付いていないさつまいもは、特殊な機械を使って土を落としているようだが、そういった設備のない小さな農家さんでは地道な手作業が欠かせない。

一つの野菜が私の元へ届くまでに、一体どれだけの仕事があり、人の思いが貯められているのだろうか。山麓に暮らしているからといって、農が暮らしの一部になっているわけではない私の暮らし。フウシカオーガニックという信頼できる農家さんと出会い、気軽に訪ねられる関係だからこそ得られる気づきであり、喜びだ。

今日は冬至。一年で最も陽の短い今日を境に、夏至に向かってエネルギーは再び蘇るそうだ。日常の感覚とは離れた目には見えないところで、自然界は常に循環している。畑は凍てつき、ここからは保存食の出番だけれど、季節は確かに巡っている。つい一年前は床を這っていた娘が、自分の足で歩き、あれがしたいこれはいやと、冒険に満ちた日々を生きている。その姿があまりに愛おしく、ついつい寄りかかってしまうけれども、私もまた、自分の内から放たれる光を見逃さず、エネルギーの手綱をしっかりと握っていきたい。

 

written by Chiaki Nakamori