自然は虹色のクレヨン

 

自然の中では、子供が描いた絵のような世界に出会うことがあります。自由さや雄大さを前にすると、安心感を抱き、心が軽やかになります。世の中の正解が窮屈に感じていた私のような人も、世界の多様性を自然から学び、未来への支えにできると私は思っています。



いま畑にいる私は、昔、スキューバダイビングのインストラクターをしていました。タンクを背負って、マスクやフィンをつけて海に潜るアレです。海の中は、ちいさな子供がクレヨンをむんずと握って好きな色で描いたような世界が広がっていました。



海の色は、透明、水色、青、緑、漆黒、、、1日でも同じ色はありませんでした。ピンクと黄色の可愛らしい魚から、目も顎も飛び出るおどろおどろしい顔の魚。黄金に輝くヒラメや、一瞬で体色がコロコロ変えるイカ。「こんなにも海の中は鮮やかで自由だったんだ。」その事実は、小さな頃の私に教えてあげたいものでした。


私は子どもの時、ドラえもんを水色に塗ったら「ドラえもんは水色じゃなくて青だよ!」と、保育園の友達に言われて恥ずかしくなった記憶があります。海は青、イカは白、タコは赤で塗らないと、「違うよー!」と言われてしまい、みんなで揃って色塗りは好きではありませんでした。なぜだか、いつも窮屈に感じていた子ども時代。ところがどっこい、たった水深30mまでの世界を知っていれば、きっと色塗りやお絵かきも好きになれたと思います。

 

海と似た発見を、畑にも覚えます。羽化したての愛らしい黄色のてんとう虫。瑞々しい緑をした蛙。自由に形を変える雲。オレンジ、赤、黄、白、紫…色も形も味も様々なニンジン。畑にいると、豊かな営みと正しい色や形がない鮮やかな生命を感じては、その発見に心が躍りました。



今の世は、親指1本でなんでも検索ができ、正解を手に入れやすい便利さがあります。でも、自然から得る体験は、いつだって楽しく、ハードな世を歩いていく人たちの糧や心の支えになると思います。この先も自然の中にいろんな色のクレヨンを選択する自由が在るよう、大地や時節を感じる野菜を育てたいと思います。

 

written by Hanae Fujiwara